« 5-2 なぜ裁定のようなことが起きるのか | トップページ | 5-4 オプションを使った裁定 »

2011年10月29日 (土)

5-3 キャッシュ・アンド・キャリー

姉「定番のアメリカンジョークです。経済学者と友人が街を歩いているとき、道端に100ドル札が落ちているのを見つけた。しかし経済学者は拾う必要はないという。『あれが本物なら、すでに誰かに拾われてるはずだからNE☆』」

弟「HAHAHA」

姉「裁定機会というのは、道にお金が落ちていることに例えられることが多いです。簡単に儲けられるという意味の他に、そんな機会がそうそうあるわけ無いだろう、という皮肉を読みとってもいいかもしれません。実際に、裁定取引を頑張っても、ほったらかしのインデックス投資より儲からなかった、なんて話は普通です。だけど、もし本当にお金が落ちているなら、ありがたくいただきたいものですよね」

弟「……お金を拾ったら届けないといけないんじゃないかな?」

姉「ととと、当然じゃないですか~。ネコババなんてしませんよ~」

弟「……」

姉「……それでは、実際に裁定についてみていきましょう」

弟「……」

姉「よく行われる裁定には先物取引が絡むことが多いです。これから話す例もそうですが」

弟「それってなんでなの?」

姉「同じものの値段が違うときに裁定が起きるといいましたが、先物というのは、未来のある時点での取引を行うものですから、厳密に言えば現物とは別のものなので、現物とは値動きが違ってきやすいというのが一つです」

弟「ふーむ」

姉「そのうえで、取引期限には先物は現物で決済されます(指数先物は現物から計算された指数で決済されます)。その時点で、よっぽどのことがない限り、先物と現物の価格差はなくなることになります。つまり、価格に何らかの裁定の余地があって、そのときの注文が通れば、取引期限には確実に利益が得られるのです」

弟「わかったような気もしなくもない」

姉「そして本題ですが、キャッシュ・アンド・キャリーの基本形は、現物が安くて先物が高い場合です」

弟「安いほうを買って高いほうを売る」

姉「そうです。例えば、ちょっと資金を借りてきて、金(Gold)の現物を買っておき、同時に先物に売り注文を出しておきます。取引期限に現物を渡してお金を受け取れば、現物を買った値段と、先物を売った値段の差が粗利益になります。そこから取引手数料や金(Gold)現物の保管コスト、借りた資金の金利を引いた上で利益が出れば、裁定成功です」

弟「お金借りてるんだ」

姉「もし自己資金があるなら、金利負担は、金(Gold)の現物を買ってから取引終了までの間に金利収入がなくなるという分だけになりますから、ハードルは下がります」

弟「なるほど」

姉「ちなみに、これの変形として、現物ではなく期日の近い先物を買い付けるというのもあります。ただし、これが可能になったときには誰の目にも明らかなので、競争率は高いです」

弟「裁定取引は早い者勝ちだったね」

姉「さらに、金(Gold)の現物をすでに持っている人は、逆のパターンの裁定をすることができます」

弟「逆?」

姉「そうです。例えば金(Gold)の先物で、取引期限の近いものと遠いものの値段が同じだったとします」

弟「値段が同じなのに裁定?」

姉「そうです。取引期限が違えば、それは厳密には違う商品です。値段が同じなのは、かえっておかしいのです。この場合だと、取引期限の近いものを売り、遠いものを買います」

弟「……とすると?」

姉「順番に見ていきましょう。取引期限の近い先物で金(Gold)を売る約束をしています。なのでその期限が来たら、ある値段で手持ちの金(Gold)の現物を渡して、お金を受け取ります。一方、取引期限の遠い先物で金(Gold)を買う約束をしています。さらにその期限が来たら、同じ値段で先に得たお金を渡して、金(Gold)の現物を受け取ることになります。丸儲けです」

弟「??……金(Gold)がお金になって、それがそっくりそのまま金(Gold)に戻っただけだよね?」

姉「ここで儲けたのは金(Gold)を保有するに当たってのコストです。金塊は、そのままタンスに入れておくわけにもいかないので、それなりに保管料がかかります。さらに、金(Gold)には金利が付きません」

弟「金なのに」

姉「このとき、取引期間中に金(Gold)の値段が上がった場合、その利益を享受できる(買い戻すときの値段はすでに定まっています)という意味で、金(Gold)に投資しているのと同じ権利を保持しています。その上で、お金に換えている期間中は保管料を払う必要がなく、お金を銀行に預ければ金利も付きます。これは丸儲けです」

弟「むー。ややこしいのう」

>目次へ

« 5-2 なぜ裁定のようなことが起きるのか | トップページ | 5-4 オプションを使った裁定 »

へっぽこ投資入門」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 5-3 キャッシュ・アンド・キャリー:

« 5-2 なぜ裁定のようなことが起きるのか | トップページ | 5-4 オプションを使った裁定 »