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2011年10月30日 (日)

5-4 オプションを使った裁定

姉「さてもうひとつ。今度は裁定として基本形とは違うわかりにくいのを挙げてみましょう」

弟「あえてそんな……」

姉「ここで、素人を騙す道具として定評のあるオプションが登場です」

弟「そんな定評嫌だ」

姉「オプションについては、こちらで解説されているように同じ限月・権利行使価格のコールとプットを組み合わせることにより、合成先物ポジションというものを作れます」

弟「先物……をわざわざ合成するの?手数料とか損なんじゃ……」

姉「普通は損なんですけどね。場合によっては儲けが出るようなことがあるのです。ここで日経225先物日経225オプションを例に挙げてみましょう」

弟「また、ややこしいの?」

姉「最初は比較的簡単な例です。例えば、日経225先物の指数が10,000円の時、権利行使価格10,000円の日経225オプションのコールオプション(※注A)のオプションプレミアムが30万円、プットオプション(※注B)のオプションプレミアムが31万円だったとします」

弟「見知らぬ用語がぞろぞろと……」

姉「手数料を考慮に入れなければ、コールを買ってプットを売れば、その時点で差し引き1万円手に入ります。コールを買ってプットを売ると、これは日経225先物の買いポジションと同じになります」

弟「先物の買いポジションを合成したと」

姉「同時に日経225先物を売れば、先物の売りと買いを両建てしたことになり、日経225先物の指数がこの先変動しても利益も損失も出ません。そして取引期限にプラスマイナスゼロで同時決済されますので、最初に得た1万円が自動的に利益になります」

弟「うーむ」

姉「実際には、もうちょっとわかりにくくなります」

弟「えー」

姉「例えば、日経225先物の指数が10,100円の時、権利行使価格10,000円の日経225オプションのコールのオプションプレミアムが40万円、プットのオプションプレミアムが31万円だったとします」

弟「何がなにやら」

姉「ここでコールを買ってプットを売れば、その時点で差し引き9万円の支払いです」

弟「あれ?その時点ではお金を払うの?」

姉「払います。しかし、その合成した先物の買いポジションは、10,000円で約定した買いポジションと等価なので含み利益が10万円あります。なので、同時に日経225先物を売れば、10万円の含み益がある状態での両建てということになりますから、やはり取引期限には差し引き1万円の利益ということになります」

弟「……そうなの?」

姉「そうです。これが、いわゆるコンバージョンやリバーサルと呼ばれるタイプの、オプションを使った裁定取引です。まあ、実際には、大きな機関投資家がコンピューターで自動的にこういった注文を出して裁定しているので、個人投資家の出番はあまりないのですけどね」

弟「しかし、そもそもなんでこんな奇妙なことが起こるのかな」

姉「これは私にはオプションの性質というほかないですね。オプションでは、将来値上がりする確率も値下がりする確率も同じである、という前提の設計になっているのです。なので、どちらかの期待が大きくてオプションプレミアムが片方だけ値上がりすると、裁定が可能になります。そして、裁定取引でオプションや先物に注文が出ることで、値段がつりあうわけです」

弟「じゃあ、将来値下がりする可能性がより高いと思っているなら……」

姉「裁定が効いていて値段がつりあっているなら、コールが割高、もしくはプットが割安と考えることもできますね」

弟「おお!」

姉「ただし、それだけ効率市場仮説に喧嘩を売る自信があるなら、普通に手数料を考えれば、素直に先物を売っといたらよいのでは、という説もなきにしもあらずです」

弟「ああ……」

※注A 指標がある価格より値上がりすると、それに応じて支払いが発生するオプション。コールオプションを買う場合、最初にオプションプレミアムを支払い、決められた期間内に指標が値上がりすると支払いを受けられる(オプションを転売することもできる)。逆にコールオプションを売る場合、最初にオプションプレミアムを受け取り、決められた期間内に指標が値上がりすると支払いをしなければならない(オプションを買い戻すこともできる)。

※注B コールオプションとは逆に指標がある価格より値下がりすると、それに応じて支払いが発生するオプション。

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