2011年10月 1日 (土)

へっぽこ投資入門 目次

世の中に、投資に関連したサイトはたくさんありますが、特定の金融商品の説明だったり、特定の投資手法の説明だったりすることが多く、投資そのものの入門を勉強できるところは少ないように思えます。

それならば、自分で書いてみようと思い立ったものの、これが素人の浅はかさ、どんどん内容がへっぽこになりました。それでも、どなたかの何がしかの足しになればと、公開することにしてみました。

目次
1 端書

2 リスクについて
2-1 リスクとは
2-2 リスクの種類

2-3 信用リスク
2-3-1 信用リスクとは
2-3-2 信用リスクへの対処
2-3-3 (余談)投資において信用してはいけない相手

2-4 流動性リスク
2-4-1 流動性リスクとは
2-4-2 流動性リスクへの対処
2-4-3 流動性リスクへの対処?
2-4-4 流動性リスクはついてまわる
2-4-5 流動性リスクと分散投資
2-4-6 流動性の余談

3 国債の買い方
3-1 なぜ国債
3-2 債権への投資の考え方
3-3 ワイルドカードとしての『個人向け国債(変動・10年)』
3-4 本当に国債を買っちゃっていいの?

4 算数的マメ知識
4-1 複利の利回り
4-1-1 72の法則
4-1-2 相加相乗平均
4-1-3 ボラティリティ、レバレッジ
4-2 数字の感じ方
4-3 統計的な考え方

5 裁定取引的な投資の考え方 
5-1 はじめに
5-2 なぜ裁定のようなことが起こるのか
5-3 キャッシュ・アンド・キャリー
5-4 オプションを使った裁定
5-5 いわゆるバリュー投資

6 最後にインデックス投資など

補遺 特約付外貨定期預金(仕組預金)の話

補遺2 特約付外貨定期預金(仕組預金)の「金利」について

2011年10月 2日 (日)

1 端書

姉「さて、これからちょろりと投資の基礎知識について小噺を始めようと思います」

弟「よろしくお願いします」

姉「ときに、クレタ人のエピメニデスは言ったそうです。『すべてのクレタ人はうそつきだ!!』」

弟「故郷で、よっぽどひどい目にあったんだね……」

姉「と、人が良い弟は考えるのですが、そう言ってるエピメニデス自身もクレタ人なんです。さてはて、彼の言うことを信用してよいのでしょうか」

弟「うーむ」

姉「まあ、『すべてのクレタ人はうそつきだ!!』というのは間違いなんですけどね」

弟「何故に?」

姉「運転免許試験の法則で『すべて~である』という命題は間違いなんです」

弟「……よくそれで免許取れたね」

姉「そしてこの話の流れで本題です」

弟「何?」

姉「本ブログの内容には何の保証もありません。本ブログにより投資判断をされたとしても、その結果に対し筆者は責任を負いません」

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2011年10月 3日 (月)

2-1 リスクとは

姉「なにか投資を始めようというときに、まず気になるのがリスクというものです」

弟「気にならない人は?」

姉「あまり投資向きではないかもしれませんね」

弟「いきなり、そんな乱暴な」

姉「それはともかくとして、そもそもリスクというのは、利酢苦と書き、時は三国時代、魏の国の一地方で行われていた食酢の市で、良い酢を仕入れるために、あちこちの店で酢を飲んで回ったという故事による……」

弟「……姉さん。いきなり民明書房(※注)から出したような嘘八百を並べるのはいかがなものかと」

姉「ぐふ。リスクというのは、一般には不確実性のことですが、特に日本では、損失をこうむるような危険性という意味で使われることが多いですね」

弟「そうなのか。もとが不確実性という意味なら、なんで儲かる可能性のほうでは使わないのかな。日本人が悲観的だからとか」

姉「いえ、そちらには『皮算用』という言葉がちゃんとありますから」

弟「そうなの……か?」

※注 民明書房とは宮下あきら著『魁!!男塾』に登場する架空の出版社で、内容はすごくフィクションです。

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2011年10月 4日 (火)

2-2 リスクの種類

姉「それでは、リスクといったら、どのようなものをイメージするでしょう?」

弟「えーとね、株とか、何か買ったものが値下がりして損をすることかな」

姉「それは、いわゆる価格変動リスクのことですね。実は、それはそれほど重要ではない、といったら言い過ぎかもしれないけれど、目に見えやすい分、怖くはありません。目に見えにくく真に怖いのは、『信用リスク』と『流動性リスク』の二つです」

弟「うーん。確かに、あまり良くわからないけど、その二つが重要なの?」

姉「そう、とても大事。この二つは普段は見えにくい上に、いざはっきり現れたときには手遅れ致命傷になりかねない怖いものです。『星の王子様』にも出てくるでしょう、大切なことは目に見えない、って」

弟「なんだか、僕は今、とても大切なものを汚された気がします」

姉「これは異なことを。大事なことはすべて『星の王子様』で学んだ、って題でビジネス書をバリバリ書けそうなくらい大人向けの童話ですよ」

弟「やめて!」


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2011年10月 5日 (水)

2-3-1 信用リスクとは

姉「それじゃ、信用リスクについてひとつお話を。あるとき、君が投資をしようと思い、証券会社にお金を預けました」

弟「ふむふむ」

姉「その会社が、預けたお金を使い込んじゃいました」

弟「犯罪だー!」

姉「そう、犯罪です。だけど、これが一番わかりやすいこの手のリスクなんです。一般的には信用リスクというのは、債務者が債務を履行できなくなるリスクのことをいいます」

弟「債務というと借金とかのことかな」

姉「確かに、返さなければならない借金も債務といいますが、それだけではなく一般的に、何かを約束したら、その約束の上で守らなければならないことが債務になります。例えば、何か商品を売買することに合意したら、売る側は商品を渡さなければいけないし、買う側はお金を払わなくてはならなりません。売り買いする両方に発生するこの義務が債務なんです」

弟「そうしたら、その場で取引が終わってしまうもの以外は、みんな債務が発生しているんだね」

姉「そうです。そして、そういった債務がきちんと実行されることを意味する信用というのは、経済や社会を支える屋台骨といってもよいのです。これ無しでは複雑な取引は何もできませんからね。今の日本のように高度に経済が発達した社会では、何かものを買うときに偽物を掴まされるんじゃないかとか、銀行が本当に指示どおり送金してくれるかとか、宅急便が荷物を盗むのではないかとか、いちいち不安になることはありません。そのこと自体は良いことなのですが、そうして信用することが日常になっているだけに、お約束や前提事項をまるごとひっくり返されるような信用リスクに対処することが、とても難しくなっています」

弟「うーん。僕もそんなこと考えて生活してないよ」

姉「だがしかし。投資においては、人生を左右するような大金を扱うこともある以上、信用リスクを考えなければいけません。つまらない落とし穴には、落ちたくないのですよ」

弟「嫌な話だけど、人を見たら泥棒と思えってこと?」

姉「警戒心を持つという意味では正しのですが、その言葉では、ちょっと方向性を間違うかもしれません。人は他人を完全に見透かせるほど賢くはないと思います。俺は長年の経験で人を見る目がある、なんて思ってる人ほど騙されますね」

弟「……姉君、あなたはいったい何を知っておられるのですか……」

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2011年10月 6日 (木)

2-3-2 信用リスクへの対処

承前

姉「ゴホン、ゴホン。えー、信用リスクに対処する方法。公的な保証を利用することと、ひとつの投資先に大金を投じないことでございます」

弟「あ、ごまかした」

姉「公的な保証を利用するというのは、例えば銀行の一般預金等(※注1)であれば、銀行が破綻しても、預金保険制度によって1000万円までは保護されるとか、証券会社への預け金でも、日本投資者保護基金に加入しているところなら、倒産しても1000万円までは保護されるといったものです」

弟「へー、そうなんだ。そういえば、証券会社でも分別保管がどうとかいっていたような気がするよ」

姉「確かに、証券会社などでは、顧客の資産を自社の資産と分けて分別保管するというのも基本ですが、正直なところ、倒産するような会社が分別保管を守って顧客の資産に手をつけないことを期待するのは、ちょっと楽観的過ぎるかもしれませんね」

弟「むぅ」

姉「ちなみに、公的な制度のように見えても、レーティングとか格付けとか上場基準とか、たとえ間違いがあっても誰も責任を取ってくれないようなものは、頼りにしてはいけません」

弟「保証があるわけではないということだね」

姉「そして、ひとつの投資先に大金を投じないということ。この大金の定義は、自分の資産に占める割合が大きいという意味です。たいていの人は、自分の全資産の1%が失われても笑っていられますし、10%が消えても何とか耐えられます。けれども、資産が全滅というのは、ちょっと勘弁。なんとしても避けたいですよね」

弟「確かに」

姉「ですから、ひとつの投資先にすべてのお金を投資するということをせずに、万が一失っても大丈夫な額に小分けして投資をします。これがいわゆる分散投資です」

弟「たとえ信用を裏切られても大丈夫なように、なんだね」

姉「安直ではあるのですが、大金を預けないというのは、資産を守るという意味では、譲ってはいけない絶対のルールです。分散投資をすると、一攫千金をあきらめる必要があったりするので、なかなか守れないルールなのですけどね」

弟「そういえば、投資信託は集めたお金を広く分散投資をすることで信用リスクを抑えると広告にあったんだけど、そういうのを利用すればよいのかな」

姉「はい、落とし穴ー」

弟「がびーん」

姉「……そのリアクションはどうかと思いますが」

弟「がちょーん」

姉「……。確かに分散投資は信用リスクを低減しますけど、この場合は話が違います。投資信託は、その投資信託というひとつの投資先でしかないですから。投信運用会社という1つの会社にお金を預けているということなので、信用リスクという面では、ぜんぜん減っていません。価格変動リスクと勘違いしやすいので要注意なのです」

弟「そーなんだー」

姉「もうひとつ似た例を挙げるとすれば、外貨預金関係ですね。米ドルなどの主要通貨は、有力な国々の裏づけがあり、いきなり価値がなくなってしまうということは考えにくいです。しかし、外貨預金の信用を裏付けるのは、それらの国家ではなく個々の銀行なのです」

弟「ということは?」

姉「つまり、いろいろな通貨の外貨預金を持っていて、それらの外貨の価値が健在でも、銀行が倒産すればお金が返ってこないということです。外貨預金は預金保険制度の対象外ですから、もろに信用リスクをかぶることになります」

弟「なるほど。確かに見えにくいリスクだね」

※注1 利息のつく普通預金、定期預金、定期積金、元本補てんのある金銭信託(ビッグなど)等。

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2011年10月 7日 (金)

2-3-3 (余談)投資において信用してはいけない相手

姉「誰も信用してはいけません」

弟「出落ち!?」

姉「……と、言ってしまうと結局どうしてよいのかわからなくなりがちなので、信用してしまいがちなものを挙げてみます」

弟「どきどき」

姉「銀行員や証券会社の社員を信用するような人はいないと思います(※注2) ので、飛ばすとして……」

弟「いきなりひどい」

姉「まずはマスコミ。一例を挙げてみると、2006年に破綻した平成電電の詐欺グループは、大手新聞に軒並み広告を載せていました。ちなみに、近未来通信とかこの手の大掛かりな出資詐欺は、結構新聞に広告を出してたりします。そして、平成電電の広告を載せた新聞社に、その広告を見て出資した被害者が賠償を求めたのですが、2010年2月17日の地裁判決では訴えは棄却されました」

弟「なんだか納得できないなー。新聞はお金をもらって詐欺に加担したようにしか思えないのに」

姉「大体この手の裁判(※注3) では、マスコミはただの素人レベルの審査力しか求められないことが多いです。マスコミも素人ですから、あなた方が騙されたようにマスコミも騙されたんです、あきらめてください、ってことです」

弟「え~?広告でお金をもらっているプロなんじゃないの?」

姉「まー、投資家としては、新聞等に載っている記事は、何の信用もないと考えたほうが良いです」

弟「眉につばだね」

姉「そして、さらに信用してはいけない相手は、その儲け話の参加者、いわゆる口コミです」

弟「え、なんで?実際に経験している人の話なら信用できそうだよ」

姉「そう。それが落とし穴です。普通の商品なら、大抵、実際に使ってみた人の意見が一番参考になることが多いものです。しかし、ことが儲け話になると事情が違います。すでに参加している人間としては、後からどんどん参加者が増えるほうが儲かるのです。株だって、自分が持っているものを後から来た人に高値で売りつけたい。ネズミ講然り、マルチ商法然り、自転車操業の出資詐欺然り。そういう利害関係にある以上、正直な意見が聞けると期待するのは間違いなのです。実際のところ、まったく関係のない人の話のほうが、冷静で役に立ったりします」

弟「じゃあ、ネットの掲示板とかで、こんな株買っちゃ駄目だとか書き込んでいる人は親切なのかな」

姉「いえいえ、それはたいてい空売りしている人たちで、値下がりした株を安値で買い戻すために、そういうことを書き込んでるんですよ」

弟「あうあう。なんか人間不信になりそうだよ」

姉「いえいえ、これはあくまで儲け話に絡むときのことですから、そうでないときは人間不信に陥る必要はありません。しかし、逆に、不用意に儲け話を口にすると、そうやって他人を巻き込もうとしていると誤解されて、信用をなくしかねないので要注意です」

弟「そういえば、友達とはお金の話をするんじゃないって、ばっちゃがいってた」

姉「先人の知恵、畏るべしです」

※注2 参考;山崎 元“「投資バカ」につける薬” 、吉本 佳生“金融機関のカモにならない! おカネの練習問題50

※注3 参考;日本コーポ事件 東京高裁昭和59年5月31日判決(判例時報1125号113頁)最高裁平成元年9月19日判決(判例集民事157号601頁)JAPAN LAW EXPRESS様より

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2011年10月 8日 (土)

2-4-1 流動性リスクとは

姉「次の話は流動性リスクです。流動性は竜堂静とか書くと奇面組(※注A)に出てきそうですね」

弟「そのネタふりに、どうせいと」

姉「同姓の方には謝らせていただきたく……ごめんなさい。流動性というのは、資産と資産の交換のしやすさのことです。交換する資産の片方は大抵お金なので、時にはお金自体のことを流動性といったりもします。何かを買いたいと思ったら、売ってくれる人がいないといけないし、何かを売りたいと思ったら、買ってくれる人がいないといけません。取引相手がたくさんいればいるほど取引は容易になります」

弟「うん。なんとなくわかる」

姉「この取引相手がいなくなってしまうというのが、流動性リスクなんです」

弟「ぬう」

姉「ここで、取引相手というのが大事です。大抵は取引参加者が多いほど取引相手は増えます。取引参加者が多いかどうかは、取引量をみればある程度わかります。例えば東証一部上場株式の取引量は毎日ニュースで流れますね」

弟「本日の出来高は○○株で、って言ってるやつだね」

姉「しかし、困ったことに、取引参加者が多いほど取引相手が多いというのは、時に成り立たないのです。例えば、取引参加者が多くても、一斉にみんなが売りたくなったら、取引相手が見つからなくなることがあります」

弟「それは困るね」

姉「すごく困ります。たとえば、現在のところ、米株式市場で1日での下落率の史上最大記録は1987年10月19日に起きた通称ブラックマンデーの暴落です(※注4) 。この暴落が起きた原因のひとつに、流動性の枯渇があげられています」

弟「どういうこと?」

姉「この当時、今で言うところのアルゴリズム取引が普及し始めたときだったのです。もし株価が下がっても、コンピュータが自動で手持ちの株を売って損失を抑えてくれる、あるいは先物に売りヘッジ(※注B)を出してくれる、これは便利だ、ということで大勢の人が採用しました。ところが、皆がこれを採用したことで、株の下落が売り注文の引き金となり、その注文が値段を下げまた売り注文が増えて、と雪だるま式にものすごい大暴落になってしまったわけです」

弟「うみゅう。みんなが一斉に売り注文を出したら、って素朴な疑問だと思うんだけど、みんなそのことを考えなかったのかな」

姉「かえって市場を知っている人ほど、現状を過信してしまうことがあります。まさか、膨大な取引が行われているニューヨーク証券取引所で、取引相手がいなくなるわけがないだろうとね。そして、最後は流動性リスクに、ちゃぶ台をひっくり返されて、すべてが台無しになるわけです」

弟「確かに、いまどきちゃぶ台をひっくり返されるとは思わないよねー」

姉「……昭和の香りが漂っていることは否定できません」

※注4 2010年5月6日取引中の998ドル50セントという下落幅として最大の暴落も同様の原因と推測されています。(参考

※注A 新沢基栄著『3年奇面組』『ハイスクール!奇面組』。登場人物名のほとんどが語呂合わせです。

※注B ヘッジとはリスクを軽減するために、一般的にいうところの「保険をかける」行動をいいます。例えば、先物に『売建て』(指標が値下がりすると利益になる)をしていれば、保有する株式が値下がりしたときに先物で利益が出るために、トータルで損失を抑えることができます(ただし値上がりすると先物に損失が出るので、株式の値上がり益をそのまま享受することができません)。「ヘッジファンドとかヘッジしてるってレベルじゃねーぞ」といった具合に使用。

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2011年10月10日 (月)

2-4-2 流動性リスクへの対処

姉「この対処法もふたつで、取引量の少ない投資先は避けることと、現金やその等価物を多めに持っておくことです」

弟「めもめも」

姉「取引量が多いからといって必ずしも流動性リスクがなくなるわけではない、という話をしましたが、取引量が少ない投資先は、流動性リスクがありまくりで問題外です。間違っても、先物で冷凍えびとか買わないようにしましょう」

弟「冷凍えび取引って、知ってる人いるのかな……」

姉「それはないとしても、流動性が悪いのに手を出してしまいがちなのは、仕手株(※注)とか不動産とかですね。流動性がないと、買うときは値段が高くなるし、売るときは値段が下がるしで、とても不利な取引になります」

弟「でもそれなら、その取引の相手側は得をしてるんじゃないのかな」

姉「相手側も取引相手が現れるまでひたすら待っていたわけで、下手したらまったく誰も来ないわけですから、まあ良くてリスク相応といったところです」

弟「そんなに良い話はないんだね」

姉「また、現金や等価物を多めに持っておくことも重要です。現金の等価物というのは、いつでも引き出せる普通預金や、解約可能な定期預金なんかです(※注5)」

弟「へー。僕の友達のお兄さんは、会社に勤めていて定期収入があるから、リスクをたくさん取れるんだっていって、貯金せずに株をたくさん買ってたけど」

姉「それも落とし穴です。株とかが暴落して流動性リスクが出てくる時は、大抵景気が悪くなりますから、給料が下がったり、下手すると解雇されたりします。そんなときに貯金がないと、不利な条件で株を売って生活費を作らなければならなくなります」

弟「あうあう」

姉「歩のない将棋は負け将棋、という格言もあります。現金や預金それ自体が収益を生み出す力は弱いですが、状況に合わせて自在に動かせるため、切り札としてとても大事なのです。信用リスクと同じく、流動性リスクの場合も、回避するというよりも、流動性リスクが顕在化しても耐えられるようにするというのが正しい方策と思います」

弟「なるほど。じゃあ、具体的にはどのくらい預金を持っておけばいいのかな」

姉「まず、少なくとも数年分の生活費は持っておいたほうが良いと思います。それを差し引いた上で、投資に回す資産のうち少なくとも半分程度は現金や預金で持っておくことを考えたほうが良いのではないでしょうか」

弟「ピンチをチャンスに変えるためにも、余裕が大事だね」

※注5 預金保険制度が適用されるもの。国債もほぼ同等の価値と考えられる。

※注 資金量に物を言わせて価格を激しく動かして利益を得ることを目的とする投機家を仕手筋といい、その仕手筋がターゲットにする、流動性が少なくて簡単に値段を動かすことができる株式を仕手株(仕手銘柄)といいます。

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2011年10月11日 (火)

2-4-3 流動性リスクへの対処?

弟「もし、投資先が投資した元本より大きな損が出る可能性がある、よくいうところのデリバティブ(※注A)だったらどうなのかな」

姉「流動性リスクを堪能できます。まったく注文が通らず、ただ損失が増えていく様は、とてもとても悲しいものです」

弟「いやいや、堪能したくないから」

姉「デリバティブについてはリスク管理がまた違ってくるので難しい問題ですが、おおざっぱに考え方はふたつで、“思い上がった方法”と“割り切った方法”です」

弟「……思い上がった方法というのは?」

姉「1回の取引の損失を2~5%(諸説あり) におさえるというものです。ただし、これを実現するとなると、相当レバレッジ(※注B)を下げるか、パソコンに張り付いていられる間以外は取引をしない、などの方策をとる必要があります。損失をおさえて一発退場を避け取引を続けていれば、プロがしのぎを削っているデリバティブ市場でも相場に勝てる、と思い上がっている人向けです」

弟「……。じゃあ、割り切った方法というのは?」

姉「人生最大の賭け。1回だけ可能な限りリスクをとって、うまくいけば勝ち逃げ、失敗したらあきらめるというものです。どうせデリバティブはゼロサムゲームで、必勝法などないし、取引を重ねるほど手数料分損をするだけだ、と思っている人向けです。ただ、1回だけならうまくいくこともありますが(※注6)、大抵の人はうまくいった時に何度も賭けを繰り返して、開拓地へ行くはめになります」

弟「破産しても自殺はダメゼッタイ。開拓地へ行こうってことだね(※注7)」

姉「……まあ、デリバティブの場合、かなりギャンブルに考え方が近いところがあります。常に冷静に。負けてよい金額以上のチップは絶対にテーブルに置かない。あらかじめ決めておいた金額を負けてしまったら、にっこり笑って席を立つ。……といった鉄則を守れる紳士のための社交場です」

弟「その鉄則は、言うは易し行うは難しだねー。それじゃ肝心の流動性リスクが現れたときにはどうするの?」

姉「部屋の隅でガタガタ震えながら命乞いする心の準備をしてください」

弟「……」

※注6 もちろん成功の条件によってうまくいく確率は変わります。

※注7 開拓地のあてがあるかどうかは実はかなり重要です。

※注A 金融派生商品。いわゆる先物、FX、オプションなど。現物の取引ではなく、指標などを元に、やり取りする金額を決めます。取引金額の一部だけで取引を始められる証拠金取引を採用するなどして資金効率がよいように設計されています。現物の買占めなどされると社会に悪影響があるので、投機資金を現物市場から隔離するという役目があります。そして、一攫千金を狙う人たちが集まる市場でもあります。

※注B 実際に取引されるものの総取引金額と、取引をはじめるときに出さなければならない必要額の比率。通常の株取引では、株式買い付けの全額が必要なのでレバレッジ1倍。信用取引では、たいてい手持ちのお金の3倍までは(足りない分は借金として)株式を買うことができるのでレバレッジ3倍。先物やFXなど証拠金取引では、総取引金額の一部のみを証拠金として出せばよいので、総取引金額と証拠金との比率がレバレッジとなる(場合によっては10倍以上に)。

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